2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「知る」ことと「感覚する」こと

1.先に引用した「直接的洞察」の例、数列の継続、自身の意図についての知、思い違い等。これらについて、「何によってそのことを知るのか?」と問われた場合、人を納得させる答えはすぐには出てこない。だが、次のように考えようとする強い誘惑がないだろう…

感覚によって知る

1.前回、「直接的洞察」というテクストの言葉から連想し、類比によって集めてきた例を、アンスコムの言う「観察に拠らない知識」と比較してみた。 気になるのは「観察」という言葉である。前回挙げた、「直接的洞察」のリストの内には、感覚が関係するもの…

直接的洞察

1.『数学の基礎』に、次のような文章がある。これは、仮に自らの後期哲学全般に関する告白として読むなら、非常に示唆的な文章のように思われる。 「われわれのごとく、ある真理について直接的に洞察するunmittelbar einsehenことなく、おそらくは帰納とい…

意図的行為の言語表現

1. ウィトゲンシュタインは、意図の表現を意味的関係の表現と比較する中で、見過ごし得ない重要な差異について指摘している。 私はある人に眼で合図を送る。わたしはそれが何を意味するのかを後になってから説明することができる。「私はそのときこのような…

「・・・として見る」と意志

1.「・・・として見る」と意志との連関を考察することが、次の課題である。 アスペクトを視ることと表象することは意志に従属している。(PPF256 cf.LPPⅠ452) ウィトゲンシュタインは、草稿、タイプ稿において、この主題、すなわちアスペクト視覚、Vorstel…

状態としての「・・・として見る」

1. これまで「・・・を・・・として見る」と「・・・で・・・を意味する」の類比を軸にして、「として見る」のさまざまな時間様態を区分してきた。「・・・を・・・として見る」の特徴として、ある時間間隔における状態の持続を表現できることが指摘された。…

「気づく」と「見る」

1.前々回、「として見る」と「気づく」に類比されるべき使用が存在することを見た。その一方で、「として見る」は、ある時点から別の時点までの「持続」を表現できることによって、「気づく」のような概念から異なっている。「気づく」は、(気づいた内容を…

適用が正当化する

1. 前回、「・・・として見る」という表現の使用に関する考察を、まず、「意味する」という表現との類比によって進めていった。「意味する」については、過去形での使用という、注目すべき用法があった。その使用の条件でにとって重要なことは、ある時点から…

アスペクト知覚と能力

1.「・・・として見る」と、「・・・を意味するbedeuten, meinen」との類比を導入する。 以前にも取り上げたが、「・・・を・・・として見る」は「その表現が一つの比較Vergleich(直喩)であるような体験」と呼ばれていた。 ある顔と別の顔との類似を見て…

Wittgenstein intersection

1. ところでウィトゲンシュタインは、アスペクト視覚を表現する狭義の形式の命題「私は・・・を。。。として見る」「わたしは。。。と・・・に類似を見る」だけでなく、アスペクトの閃き(あるいはその体験)を表現するさまざまな形式の発言をも考察の対象と…

2つの使用

1.まず、『探究 Ⅱ』xi節の有名な冒頭で既に文法的使用の問題との連関が示唆されていることを手短に示したい。 最初に、以前引用した、次の講義の一節を見てみよう。 良い表現の仕方ではないが、次のように言うことができよう。「同じ」、「似ている」、「類…

『哲学探究』第Ⅱ部xi

1.従来、アスペクト視の議論を含む『探究Ⅱ』第xi章は知覚論として捉えられることが多く、例えば「知覚の理論負荷性」というテーマの下に論じられたりしてきた。確かに、第xi章及び関連する遺稿では、見ること、解釈すること、考えることの関係が主題の一つに…

「現象」と「指し手」

1.「表出」「叫び」、「記述」「報告」。ウィトゲンシュタインによるこれらの概念の使用が 曖昧で明確さに欠ける、という批判には 「確かに」と言わざるを得ない。だが、それ以前に、根本的な異議が唱えられるかもしれない。 「かりに私が痛みを感じるとし…

表出と記述

1.ここまで見てきた「表出」や「叫び」という概念には、さまざまな曖昧さが付きまとっている。 たとえば、自らの心理に関する一人称現在時制の文の中には、自らの心的状態の「記述」と呼ぶべき文もあることを、ウィトゲンシュタインは認めていた。 あるひと…

「叫び」という概念

1. 「心理学の哲学」関連のテクストには、「表出」に類似した、共に「叫び」と訳される2つの言葉、AusrufとSchreiがしばしば登場する。(この2つの意味の違い、使い分けの有無が問題となるが、とりあえず、ここではまとめて扱うことにする。下に引用したLPPⅠ…

意図の表明

1.ウィトゲンシュタインにおいて、「表出Äußerung」と「記述」の対立が問題となるケースの一つを、次の例に見ることができる。 「私はそこへ行くことを意図している」これは心の状態の記述なのか、それとも表出Äußerungなのか。(RPPⅠ593) 「意図の表明」…