2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

「説明」の周辺(22):「一瞥」と「熟知」

1. 前回の、関数の比喩を用いた考察で、表情を認知することを、ある表情をある関数の値として見ること、に喩えた。そこでは、表情からある関数が推測される、という風には描出しなかった。それはもちろん、表情が一瞥で見て取られることを表現するためである…

「説明」の周辺(21):情動、表出、経過

1. 同じく容貌を根拠にしながら、性格や運勢を判断するよりも確かな種類の判断がある。 ある人の表情から、その後の態度や言動を予想すること、 または、以前の状態や出来事について推察すること、である。 例えば、入学試験の合格発表日に、道で出会った受…

「説明」の周辺(20):過程と一瞥

1. 「一瞥性」の観点から、表情認知について振り返る。 Physiognomieという言葉に、 ウィトゲンシュタインのテクストの中でしばしば出会う。(例:PI235, 568, PPF238,RPPⅠ654,RPPⅡ68,615) Physiognomieは、主に 容貌、表情という意味で使われるが、同時に…

「説明」の周辺(19):「数学の基礎」と一瞥性、4つの問い

1. 「一瞥性」について重要なのは、「数学の基礎」に関する考察の中で、それが問題として浮上していることである。「数学の基礎の探求」(cf. PPF372)、それを文字通り「基礎的」な、非常にプリミティブな数学的行為を対象に行うことで、「一瞥性」の問題が浮…

「説明」の周辺(18):「表情的同一性」

1. ウィトゲンシュタインは、表情の「一瞥性」を、別の角度から、「表情(表現)的同一性 equality of expression」の問題としても捉えている。 私が紙に鉛筆でなぐり書きし、「これは誰だ?」と尋ねると、「ナポレオンだ」という返事が来る。しかし、我々は…