2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

第四種動詞の周辺(5)

1. 通常、第四種動詞は、文末ではつねにテイル形で用いられる、とされる。 しかし、この一般的制約に反して、第四種動詞、例えば「そびえる」がル形で用いられる場合があることを、影山は指摘する。実際にインターネットで検索した例として、次のような文章…

第四種動詞の周辺(4)

1. 第四種動詞とテイル形の問題に戻る。 第四種動詞におけるテイル形の機能を、「他者との対比」とする考え方の問題点については既に見た。 それは例えば、第四種動詞がル形で用いられる場合もあって、そこでも「対比」の機能の面ではテイル形で用いられる場…

日本語動詞の自他対応、様態vs.結果

1. 日本語の動詞の自他対応について、佐藤琢三の研究をもとに見ておく。 2つの動詞が自他対応をなすことは、次のように定義される。 (佐藤琢三『自動詞と他動詞の意味論』p170) a. 意味的条件:自動詞文と他動詞文が同一の事態の側面を叙述していると解釈可…

日本語における態voice の概念

1. 態voiceと言われて、すぐに思い浮かぶのは、能動態、受動態の対であるが、他にも様々な態が存在する。態とはそもそも何だろうか? ここでも日本語学から学んでゆくが、ごく基本的なレベルでの確認に留める。 寺村秀夫は、態を、「補語の格と相関関係にある…

能動詞と所動詞

1. 前回、第四種動詞が文末でル形で使用されている例を引用して、いずれも「書きことば」であって、具体的他者を前にした発話ではないことに注意を促した( 1. のc.)。元々、当ブログが第四種動詞の話題に入っていったのは、これらの例にも示されている、「テ…