私的言語論

私的言語論を平明に読むために5

1.前回、「環境Umgebung」「状況Umstand」という語に着目した。言語ゲームを呈示することは、その「環境」をも呈示することである、と言ってよい。 一つの言語ゲームを想像することは、一つの生活様式を想像すること(PI19) いままで、「感覚日記」の妥当な…

私的言語論を平明に読むために4

1.「感覚日記」と、その拡張の問題に戻る。 「E」は、より広いコンテクストにおかれて初めて、「名」であり、「感覚」を意味していると、十分に主張し得る。コンテクスト、それをウィトゲンシュタインがしばしば使用する言葉を用いて、環境Umgebung(PI250他…

私的言語論を平明に読むために3

1.258節においてすでに、「E」がある感覚の記号であることの正当化らしきものが登場していた。それが「自分自身に対するある種の直示的定義」と呼ばれていたものである。 この行為によって、「E」が「これ」(その感覚)の記号であることが、「主体自身」に…

私的言語論を平明に読むために2

1.前回触れたように、これまで「私的言語論」に関する議論の中心となってきたのは『探究Ⅰ』258節の「感覚日記」であった。 次のような場合を想像してみよう。私は、ある一定の感覚が繰り返し起こることについて日記をつけたいと思う。この目的のために、私は…

私的言語論を平明に読むために 1

1. 『探究Ⅰ』の「私的言語論」は、長い間、後期ウィトゲンシュタインに関する議論の焦点であるかのように扱われてきた。しかし現在、『探究Ⅰ』の中におけるその位置づけ、重要性については、人に拠って見解が分かれ、意見の一致を得ることは難しいかもしれな…