2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「説明」の周辺(10):後期ウィトゲンシュタインとカント

1. ウィトゲンシュタインの「美学に関する講義」の内容について、いくつか確認する。 彼が講義で述べた内容は、大学の人文系学部で研究されているような「美学」に類似したものではなかった。 むしろ、それは、「美」に関連して行われる日常的な言語ゲーム(…

「説明」の周辺(9)

1. ウィトゲンシュタインの「美学」に関する発言は、彼の講義をG. E. Moore や学生たちが筆記したノート、およびそれらを編集した出版物を通じて知られている。 それら「美学」に関する発言が記録され残された講義の時期は、1932-33年、1938年夏である。(G.…

「説明」の周辺(8):部分-全体、手段-目的、原因-結果

1. 前回まで、ウィトゲンシュタインが、「理由を述べる」行為を「計算の道筋を示す」行為に類比して把握しようとしていることを見てきた。 「計算の道筋を示す」行為は、実際には(ウィトゲンシュタインの言う)「像」Bild を用いて行われることに注意しよう…

「説明」の周辺(7):「並べて」「見せる」、合意と注意

1. 前回引用した文から、次のようなことが示唆されている。すなわち、「説明」が正当化のためになされる場合、そこで描出される「道筋」は、「ある受け入れられた規則に合致する」という性格を持つべきである、こと。 人が為したこと、言ったことの理由を述…