2024-01-01から1年間の記事一覧

実現可能文の問題に向けて

1. ここで、少しの間 動詞ル形の問題を離れて、「実現された可能」の問題に触れておきたい。 次のような文を、当ブログでは、「実現された可能」を表現する文と呼んだ。 ・うちの弟、最近は、学校に行けているよ。 ・○○選手、不調だった去年とは違って、いい…

動態動詞ル形の用法について(12)

1. 山岡政紀は、「可能動詞文」、すなわち「可能動詞」の文について、 …可能動詞文は、動詞文でありながら動作性が捨象されており、しかも必ず有題文となり、基本的に〈属性叙述〉である。 (山岡「可能動詞の語彙と文法的特徴」p10) と述べている。山岡が…

動態動詞ル形の用法について(11)

1. 前回に続いて、問題の動詞文が成り立つ条件について見てゆく。ル形が現在の事象を表すような可能表現の種類は多岐にわたるが、ここでは当ブログの関心から、可能態(可能形)中心に見てゆき、それとの絡みで自発態に触れたい。 まず、動詞が可能態(可能…

動態動詞ル形の用法について(10)

1. 《Ⅶ 可能態・自発態》のル形用法について。 ここでも、以前紹介したカテゴリーとの中間例を見ることから始めたい。 山岡は、前回見た<感情表出動詞>の例文の中に、次のような文を、<知覚表出>として含めている(「日本語の述語と文機能の研究」p209-1…

動態動詞ル形の用法について(9)

1. 続いて、「一人称ル形で話者の感情や内的感覚を表出する動詞」について見てゆく。 鈴木重幸「現代日本語動詞のテンス」、高橋太郎『現代日本語動詞のアスペクトとテンス』に挙げられた文例より、 ・「市川君、そう君のように言うから困る。~」 ・「登喜…

動態動詞ル形の用法について(8)

1. 続いて、 Ⅵ 知覚・思考・内的状態の表出 に移る。 Ⅴに属する、態度表明のル形については、前回見た。ここではまず、ⅤとⅥを連続的に捉える。つまり、態度表明のル形とⅥの中間例を見ることにより、Ⅵ全体に向けた導入とする。 鈴木重幸は、(前回取り上げた…

動態動詞ル形の用法について(7)

1. ここまで、鈴木重幸の謂う「非アクチュアルな現在」を表現するル形について見てきた(cf. 2023-11-27)。続いて、「アクチュアルな現在」の事象を表すル形の用法に入る。 高橋太郎によれば、現代日本語動詞の完成相非過去形(すなわちル形)は、次のような…

動態動詞ル形の用法について(6)

1. 続いて、 ⑥履歴属性叙述のル形文 益岡隆志は、属性叙述の一種として、「履歴属性」というカテゴリーを立てた。それは事象から派生する属性の一つ、「本来的に事象を表す動詞文(動詞述語文)が属性を派生する(含意する)」場合の一種である。 もう一つの…

動態動詞ル形の用法について(5)

1. 続いて、 ③「虚構移動文」(cf. 三原健一、『日本語構文大全Ⅰ』p255~) この構文は、道路、山地等を主語にとる。 中国自動車道は、吹田を起点に、しばらく市街地を走る。 金剛山地は大阪府と奈良県の境を南北に走る。 「虚構移動」と呼ばれるのは、道や…

動態動詞ル形の用法について(4)

1. Ⅱ属性叙述 に含まれる、特徴的な構文や使用について見てゆく。 次に挙げる2つは、あるいは、Ⅵの「知覚・思考・内的状態の表出 」に分類することも可能かもしれない。ⅡとⅥとの関連を顕在的に示す例でもあろう。 ①<AはBの味(香り、におい、音、肌触り、…

動態動詞ル形の用法について(3)

1. Ⅱ属性叙述 の用法に移る。 「属性叙述」については、以前簡単に紹介したが、「属性」の時間的性格については、関連する益岡隆志による属性の分類を紹介するに止め、正面からは論じなかった。 益岡による属性のタイプ A 本来的な属性 A1 カテゴリー属性 A2…

動態動詞ル形の用法について(2)

1. 前回、ル形の変則的用法の分類として、次を挙げた。 Ⅰ 反復や習慣を表す用法Ⅱ 属性叙述Ⅲ 一般化して表現する用法Ⅳ 実況解説的用法ⅴ 遂行動詞や態度表明の動詞Ⅵ 知覚・思考・内的状態の表出Ⅶ 可能態、自発態 以下、順に見てゆきたい。まずは、細かい部分に…