2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

テイル形と「統括主題」

1. 続いて、「シタ」に交換できる、「シテイル」の過去テンス用法(井上は「過去的用法」と呼ぶ)について見てゆく。 その場合、「シタ」が使えるわけだから、事象の経過を、話し手は把握できているはずである(前々回を参照)。 それにも関わらず、「シテイ…

テイル形の記録用法

1. 引き続き、井上の論文(「現代日本語の「タ」」に依りながら、タ形とテイル形の使用の重なり、その条件等について見てゆく。 テイル形には「ていた」という過去形があるが、それとは別に、「ている」の形で、テンス的には過去とみなせる用法が存在する。…

タ形の使用条件

1. これから触れる、井上優「現代日本語の「タ」」は、三つの問題に答えようとする論文である。 <問題1> 過去の出来事を述べるのに「シタ」「シテイル」という二つの言語的手段があるということはどういうことか? <問題2> 「シタ」に、パーフェクト的…

テイル形とパーフェクト

1. 前回、寺村秀夫を参照して、日本語のテイル形の機能として、次の5つを挙げた。 a.動作継続 b.結果残存 c.習慣・反復 d.回顧的用法 e.第四種動詞の語尾 寺村が、d.回顧的用法として挙げた例は、 その年、東京には二度大雪が降っている あの人はたくさんの…

テイル形と 解釈の構造

1. 「微積分への類比」を試みた主な狙いは、進行相の文が持つ、説明の機能や予測を引き出す機能について、その構造を見えやすくすることにある。 進行相の文を ある「解釈の構造」を備えたものと仮構してみるなら、それらの機能はこの構造から理解されるであ…