2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

論理的に不可能なものの記述

1.ウィトゲンシュタインの数学論の立場は、しばしば「規約主義conventionalism」という術語で呼ばれる。ただし、この「規約主義」とは、「常々、規約が明示的に示され、その都度、人々がそれに合意する」ことを主張しているのではない。その内実は、先に「円…

規則遵守と関連する行為

1.「私は通常の’+’の規則に従って2+3を計算した。」のように、「規則に従う」行為は、命題で表現される。 「私は通常の’+’の規則に従って2+3を計算した。」は、「私は通常の’+’の意味に従って2+3を計算した。」と言いかえられる。また、 「68+57=5だって?君…

認知の時間

1. 簡単な計算を例にして、数学における「過程と結果の同等性」(RFMⅠ82)という観念、ウィトゲンシュタインが「円環をまわる」(RFM Ⅵ 8)と呼んだ行動様式についてみてきた。 『論考』においても、論理学の命題の証明が論題に上がることで、証明の「過程」とい…

『論考』の射程

1. 前回まで、特定の結果を操作(過程)に本質的なものと見なすことで、ウィトゲンシュタインが「円環」とよぶ構造が造られることを見てきた。 そもそも「操作」や「過程Vorgang」は、時間のなかで進行する事象である。 したがって、「発端」や「途中」、「…

円環と概念

1.ある命題が「規則として」扱われるかどうかが、アプリオリに決定されているわけではない。 ただし、実験について、正しい結果、間違った結果が語られる場合も存在する。例えば、実験室で生徒が、H₂SとSO₂をこれこれの比で混合したものの、爆発が起きなかっ…

実験と計算

1. 経験的命題:文法的命題 の関係にパラレルな関係が、実験と計算(あるいは証明)の間に成り立つ。 「私がこれを再度おこなったとせよ」-ここで「これ」は、この結果を含意しない。さもなければ、それは実験ではなく、計算である。-内的関係が存在するこ…

操作と結果

1. 先の問いかけを確認した上で、経験的命題と文法的命題の使用の違いという問題に戻る。例えば『数学の基礎講義』のある個所では次のように述べられている。 同じ外見をした経験的命題と数学的命題の差異について、私がもし誰かに大雑把なヒントを与えると…

規則の表現

1. 経験的命題と文法的命題を分けるものが「使用」(「扱い」)であるなら、「ある命題を文法として扱うとはいかなることか」、「何がそのような扱いの特徴か」が問題となる。 これまでの議論は、一つの要点を持っていた:すなわち、全く同様の外見を持つ数…

文法的命題、経験的命題

『探究Ⅱ』xiの冒頭(PFF111)で取り上げられる「2つの使用」について、 テクスト間を類比によって辿ることで、「アスペクト知覚論」と「数学の基礎」論に共通した根が存在することを確認しておいた。(「2つの使用」)すなわち、その「2つの使用」の区別の問題…