美学の考察

「説明」の周辺(10):後期ウィトゲンシュタインとカント

1. ウィトゲンシュタインの「美学に関する講義」の内容について、いくつか確認する。 彼が講義で述べた内容は、大学の人文系学部で研究されているような「美学」に類似したものではなかった。 むしろ、それは、「美」に関連して行われる日常的な言語ゲーム(…

「説明」の周辺(9)

1. ウィトゲンシュタインの「美学」に関する発言は、彼の講義をG. E. Moore や学生たちが筆記したノート、およびそれらを編集した出版物を通じて知られている。 それら「美学」に関する発言が記録され残された講義の時期は、1932-33年、1938年夏である。(G.…

「説明」の周辺(7):「並べて」「見せる」、合意と注意

1. 前回引用した文から、次のようなことが示唆されている。すなわち、「説明」が正当化のためになされる場合、そこで描出される「道筋」は、「ある受け入れられた規則に合致する」という性格を持つべきである、こと。 人が為したこと、言ったことの理由を述…

「説明」の周辺(1)

1. 後期ウィトゲンシュタインと「説明」 に関するメモ。 『探究Ⅰ』の最初の節に、「説明 Erklärung」に関する重要な主張が早くも登場する。 説明は、どこかで終わるものだ。(PI 1) この主張は、類似した「理由の連鎖には終わりがある」(BBB p143, RPPⅡ404, …