2025-01-01から1年間の記事一覧
1. 前回のように定義される positive strong/negative strong /weak determiner、およびdefinite determinerにはどのようなものが該当するか、実際に見てゆこう。 B&Cが挙げているのは、次のようなリストである。 <positive strong> the 1, the 2,…( : the n ) both, all, eve</positive>…
1. ここから、Barwise&Cooper "Generalized Quantifiers and Natural Language"の内容に戻る。 限定詞determinerのweak/strong、definite/indefiniteについて。 (※B&Cにおいては、これらの特性は、まずは限定詞について言われる。それに対し、例えば、"live …
1. このように、Milsark ("Toward an Explanation of Certain Peculiarities of Existential Construction in English") は、strong NPを 全称量化された名詞句universally quantified NPに類比的な表現、weak NPを数量的限定詞number determiner付きの名詞…
1. ここまで、Milsarkがdefi!ite restriction(DR), predicate restriction(PR)と呼ぶ現象をそれぞれ見てきたが、両者に対する反例も比較的容易に発見できる。 DRについては、次のような例、 Who could possibly play Hamlet? Well, there's John. (from Barw…
1. 続いてMilsarkがpredicate restriction(PR)と呼ぶ現象について。 それは、次のような例が示している。 *There are linguists intelligent. *There are people tall. *There are many people crazy. (cf. Milsark,"Toward an Explanation of Certain …
1. G. L. Milsark の論文"Toward an Explanation of Certain Peculiarities of Existential Construction in English" について、当ブログの関心に沿う範囲で要点を見てゆく。この論文は、彼の博士論文 Existential Sentences in English の内容をまとめたも…
1. (2025-03-19を承けて) このように、P.F.Strawson は、1964年の"Identifying Reference and Truth-Values." において、"topic"という曖昧な概念が真理値の決定に果たす役割を認めることとなった。(この見解が、その後の哲学においてどのように評価され…
1. 量化子と限定詞の性格に関する重要な概念、〈保守性conservativity〉その他について見てゆく。 conservativityは、B&C論文においては、the property"Lives on"と呼ばれる。同時代の他の研究者によってさまざまな呼び名が与えられていたが、それらの内で現…
1. ここまで見てきたように、B&C論文の基礎にあるものは、量化子を、個体、モノthing の集合Eのべき集合Pow(E)を二分する機能を持つものと見る見方である。そこから、量化子とフィルター概念との関連も生じている。 もちろん、フィルターであるのはごく一部…
1. Barwise&Cooperの論文で使用される記号システムL(GQ)とモデルについて見ておく。といっても、全部書き出すのは手間なので、要所についての注意書きにとどめる。 L(GQ)の非-論理的記号は、定項、関係記号R、(非-論理的)限定詞Dから成る。関係記号が一つ…
1. John Barwise とRobin Cooperによる著名な論文 " Generalized Quantifiers and Natural Language " について、今後参照が必要になると思われる事項を中心に見てゆく。(網羅的な概観は意図していない。) まず、彼らの云う" quantifier" の意味について。…
1. 束の公式と基本的な定理を再掲する。 a◡b=b◡a, a◠b=b◠a (交換律)a◡(b◡c)=(a◡b)◡c, a◠(b◠c)=(a◠b)◠c (結合律)a◠(a◡b)=a, a◡(a◠b)=a (吸収律) a◡(b◠c) ≤ (a◡b)◠(a◡c)(a◠b)◡(a◠c) ≤ a◠(b◡c) a≤a◡b, a◠b≤aa≤cかつb≤c⇒ a◡b ≤c, c≤aかつc≤b⇒c≤ a◠ba◡b=b ⇔…
1. 一般化された量化子の理論Generalized Quantifier Theory(今後、「一般量化子理論」と呼ぶ) について確認しておく必要が生じているが、そのためには、ブール代数(ブール束)の基本的概念の理解が前提となる。ただし、数学的に一般化された形で展開する…
1. Nomi Erteschik-Shir, Information Structure のtopic概念について見てゆきたいのだが、彼女は、P.F.Strawson"Identifying Reference and Truth-Values"から影響を受けているので、まずStrawsonの議論から触れてゆこう。 "Identifying Reference and Trut…
1. 前回まで、主にfocus概念に関する問題を見てきた。topic概念については、一つの比喩を提示したものの、その本質については深く探求しないまま、contrastive topic や「問いー答え 連関」との関係といった話題に突入した。 その比喩が示すtopic 概念の把握…
1. focus 概念の本質を、オルタナティブの喚起・暗示に見る場合、その「オルタナティブ」は、「テクストに関連があること」が条件となっていた。その関連性の典型として、〈問いー答えの連関question-answer congruence〉が挙げられた(cf. 前々回)。 それは…
1. ここまで見てきたように、現在 主流的なfocus概念(の捉え方)は、「オルタナティブの喚起・暗示」をその本質とするものであった。focusの語句は、そのオルタナティブとの対比、コントラストをも表示する。 一方で、topic概念も、オルタナティブあるいは…
1. 前々回、オルタナティブ(選択肢)の暗示を核とするfocus概念について見てきた。が、その内実は、未だ不明確である。 ここにも、心理学的 vs. テクスト構造/機能的の二義性が存在する。 まず、聞き手の心に「オルタナティブ」を喚起するという側面に注目…
1. 迂回の連続によって進行してきた当ブログだが、さらなる迂回を控え、今一度、現在立っている地点について確認しておきたい。 『探究Ⅱ』§111の「私は、この2つの顔に類似を見る Ich sehe eine Ähnlichkeit in diesen beiden Gesichtern」という文をめぐる…
1. 認識動詞構文、特にヲ格小節型の述語制限問題について考えてゆく内に、Stage-level predicate(SLP)/Individual-level predicate(ILP)の問題との類比に行き当たった。SLP/ILPの問題は英語圏の言語学で追求されてきたが、関連する研究の拡がりは広大であり…
1. ここまで見てきた事例を、別の観点から眺めてみよう。ヲ格小節型になり難い「埋め込み文」述語の一例から。 a. 太郎は花子を言語学者だと思った。(ヲ格終止型)b. 太朗は花子が言語学者だと思った。(ガ格終止型)c. *太郎は花子を言語学者に思った。(…
1. 三原健一は、認識動詞構文について、「頭の中でいちど転がす」動詞を用いた構文である、と面白い言い方をしている(『構造から見る日本語文法』第5話、『日本語構文大全Ⅱ』p101)。 (三原によれば、以下の議論の内容は藤田保幸の論文(当ブログは未見)…
1. ヲ格小節型における「埋め込み文」の述語制限にスポットを当てた研究に、 阿部忍 ”ことばと主観性 −認識動詞構文再考− ” がある。 まず、その紹介によって説明を始めよう。 ここまで、認識動詞構文の小節型を論じるために、関連する構文とともに考察する…
1. ここまで導入として、情報構造における中心的概念<topic>, <focus> のイメージについて、最初の一瞥を終えた。いずれの内容についても、さらに少しずつ解像度を上げていかなければならない。 だが、次のような素朴で基本的な問いが湧いてくるものの、答えられないままで</focus></topic>…
1. 前回、topic/focus等の概念を定義する際、表示対象referentと(心的存在としての)話者/聞き手との関係性に基づける方法と、テクストの構造あるいはテクスト的機能によって規定する仕方があることを確認した。 後者のアプローチを重視すると言ったが、ど…