1.
ウィトゲンシュタインの「数学の基礎」に関する考察を読解してゆく内に、
目的=終点endを持ち、遂行に時間を要する行為を表す動詞(Vendlerの分類でのaccomplishment verb)の、imperfectiveな使用の問題
に関心を見出して、ここまで来ている。
ただし、途中の道程は非常に見通しの悪いものだった。
途中一度整理を試みたが、再度、まとめの試みをすべきかもしれない。
しかしそれを筋道立てて書く余裕はないので、粗いメモのかたちで残しておきたい。
p.
2.
さて、以上を、もう一回り大きな枠組みで見てみよう。
「数学の基礎」について読み解く前の準備段階で、アスペクト知覚論と「数学の基礎」論に共通するテーマを「2つの使用」問題に見出した。(“2つの使用”)
その「2つの使用」の内の一方を、ウィトゲンシュタインは「無時間的 zeitlos, unzeitlich」使用とも呼んだ(cf. LPPⅠ152, RCⅠ1)。一般に、文法的命題や数学的命題が使用される仕方が、この「無時間的使用」である。「無時間的使用」は「時間的zeitlich使用」と対比される。
その後、「数学の基礎」論について見てゆく中で、「数学的命題の二重性格」を認識することになった。この「二重性格」は、「計算間違い」という概念が存在することにも関わりがある(上の記事を参照)。
上でも述べたように、「計算する」は telicな動詞であり、「計算間違い」について叙述することは、「計算」の終点(=目的)に到達されなかった状況で、当の「計算」行為について語る仕方の一つである。それは「計算」概念の「時間的使用」の一種である。
それ以外で一般に、telicな動詞を、その終点=目的に未到達の状況を叙述するのに用いる仕方として、その動詞をimperfective aspectで使用する仕方がある。
そこから当ブログの関心はimperfective aspectの文の使用の問題に移っていった。以降の歩みについては、今振り返ったばかりである。
その中で、imperfective aspectと関連づけ、という話題が浮上していることに注意しよう(上記のe. を参照)。この問題を重要視したからこそ、「説明」をキーコンセプトの一つとして挙げ、さらなる掘り下げを求めたのである。
一方「2つの使用」問題はどうなったか?
“「説明」の周辺(1)” で、「美学的説明」の概念を導入したとき、アスペクト知覚論、「数学の基礎」論との連関について示唆しておいた。「美学的説明」について解明する意図の一つは、「2つの使用」問題に補助光を当てることにあった。
ただし続く記事では、「原因」との差異を通して「理由」の概念について解明することに進んだ。「理由づけ」は、「関連づけ」の一部であり、その代表とも言えよう。
表情の「比較」の問題が浮上してきたときにも、そのバックには「関連づけ」の問題が潜んでいた。(ただし、そこでは、主に「病的な比較」というネガティブな形態に注目したため、「ノーマルな比較」について論じることはできなかったが。)
そこで、「美学的説明」概念の探究に期待されるのは、「2つの使用」問題と、「imperfective aspectと関連づけ」問題、2つの問題系の連関を明らかにすることである。
では、「美学的説明」とは結局何だろうか。